認知症の介護

加齢と共にほとんどの人は認知・判断能力が低下しますが、そのことで生活に支障が出てきた時点で認知症と診断されます。

あなたが認知症になっても、あなた自身は困らないかもしれませんが、あなたの大切な人が認知症になった時あなたはどうしますか。施設に預けますか、それとも自身で介護しますか。

ここでは認知症と診断される前にどのような心構えをしておけば良いかを記載します。

認知症の薬はまだ無い

認知症とは、様々な病気が原因で脳細胞の機能が障害されて起こる症状のことを言います。四大認知症(アルツハイマー型、レビー小身体型、血管性、前頭側頭葉変性症)以外にも種類はありますが、全体の半分以上がアルツハイマー型です。

アルツハイマー型は神経変性疾患と呼ばれ、年単位で徐々に認知機能が衰えていきます。現在4種類の薬が認可されていますが症状の進行を遅らせることしかできず、進行を止めたり回復させたりする薬剤はまだ開発されていません。

認知症の人の数

近年、認知症の人の増加が顕著となっています。2012年の65歳以上の認知症の人は約462万人、65歳以上の約7人に一人とされています。

80歳から84歳では認知症の有病率は、男性は約6人に一人、女性は約4人に一人、85歳から89歳ではこの割合は倍ほどに増加し、以降の年齢でも認知症の有病率が増加しています。さらに、今後の高齢化と相まって、2025年には認知症の人は約700万人前後まで増加すると推計され、これは65歳以上の約5人に一人となります。

在宅介護か施設入居か

認知症の患者を抱えることになった場合、家族で介護をするのかそれとも施設に預けるのかという選択に迫られます。最初は家族とケアサービスで介護を試みるでしょう。しかし24時間365日ほぼ一時の休みもなく介護を続ければ介護側が疲弊して徐々に限界を感じることになります。

また、認知症の発症から生命予後は約3〜7年とされていますが、いつ終わるかわからないことも大きな不安要素です。介護者のストレスが大きくなると鬱などの精神疾患を発症することにもなりかねません。

<認知症の映画>http://yaeko-humming.jp/

ここに「八重子のハミング」という2017年に公開された映画をご紹介しましょう。妻を献身的に介護したドキュメンタリーです。

主人公は陽信孝という山口県萩市で校長を歴任した元教育長。妻も元音楽教師。思いもよらなっか夫婦の同時発病。夫は3度の癌手術から生還する一方で、妻のアルツハイマーは徐々に悪化。自らも迫りくる死の影に怯むことなく、献身的に妻の介護を重ねること11年間、4000日余りに及んだ老老介護。2002年に他界した愛妻を偲び80余の短歌で読み綴った。ハミングとは妻が教員時代を思い出し口ずさんだ歌のことである。

介護にかかる費用

在宅介護

在宅にしろ施設にしろ気になるのが費用です。医療費や介護費については、支払いの上限額が定められた高額療養費制度、高額介護サービス費制度があり、それぞれ上限額が設定されており、それを超える部分の費用は申請すれば返還されます。

例えば、世帯収入が370万円〜770万円の現役並の所得がある場合、高額療養費の上限額は月8万円代、高額介護サービス費の上限額は月44,400円となっています。(ただしこれらの上限額は近年徐々に引き上げられています)更に、これらの合算額に対しても上限額が設定されている高額介護合算療養費制度があり、先ほどの世帯での上限額は年間67万円となっています。

施設入居

老人ホームなどの介護施設への入居のためには、一時金に加え毎月の入居費も10万〜20万円はかかります。この費用を介護者が負担することが難しい場合、患者本人に資産があればそれを充てることが考えられます。ところが認知症と診断された後では患者は一切の契約行為ができなくなり、その資産を入居費に充てることができなくなってしまいます。

その対応策として、認知症になる前から(親と子で)家族信託の契約を結んでおく方法があります。家族信託では親が財産の管理権を子供に委託すれば、本人に契約能力がなくなった後でも子供が信託された財産を動かすことができるようになります。

この制度は信託法が改正された2007年にできましたが、まだあまり活用されていません。2030年には認知症の人が保有する資産が個人金融資産の約1割、215兆円にのぼるという試算もあり、この資産の流動性が全くなくなってしまうことがないように国も金融機関も検討しているようです。

まとめ

・認知症の人の数は2025年には700万人と予測され、これは65歳以上人口の5人に一人に当たります。

・認知症になり医療費や介護費が高額になった場合、上限額以上の費用については還付される制度があります。

・認知症と診断されると患者が保有する資産が凍結されるため、認知症になる前に家族信託などの対策をしておくことが大切です。