ゼロで死ね(DIE WITH ZERO)

2020年9月に刊行された本で、人生でのお金との付き合い方を考えさせられる興味深い本があったので紹介する。著者は1969年アメリカテキサス州ヒューストン生まれのコンサルティング会社CEO。多くの人が老後不安のためにお金を溜め込み人生を楽しんでいないなかで、人生で大切なのは経験と思い出づくりだと言い切る。アリとキリギリスなら両者ではないその中間のバランスを見つけて生きろという本である。そこには9つのルールが書いてある。

 ルール1 「今しかできないこと」に投資する

  • 先延ばしをせずに、今すぐ本当にやりたいこと、大切なことをすべき。
  • 節約ばかりしていると、その時にしかできない経験をするチャンスを失う。人生は経験の合計。
  • 明確な将来の計画を持ち、同時に今を楽しむことを忘れない。

 ルール2 一刻も早く経験に金を使う

  • 人生で一番大切な仕事は思い出づくり、最後に残るのは結局それだけ。
  • キリギリスはもう少し節約すべきだし、アリはもう少し今を楽しむべき。
  • 老後の備えは必要だが、老後で何より価値が高まるのは思い出なので、早い段階で経験に投資すべき。

 ルール3 ゼロで死ね

  • 莫大な時間を費やして働いても、稼いだ金を全て使わずに死んでしまえば、人生の貴重な時間を無駄に過ごしたことになる。その時間を取り戻すすべはない。
  • 仕事が好きであっても、仕事とは無関係の経験にある程度の時間を費やすべきと考える。
  • 誰かに金を与えるなら早いほうがいい。必要以上に貯め込むことや金を使うタイミングが遅すぎることが問題。

 ルール4 人生最後の日を意識する

  • 自分があとどれくらい生きるかを真面目に考えてみることには価値がある。
  • 早死にするリスクは「死亡リスク」予想より長生きする可能性は「長寿リスク」、死亡リスクは生命保険、長寿リスクは長寿年金保険(トンチン年金)でカバーできる。
  • 富の最大化ではなく人生の喜びを最大化するための方法を探すこと。

 ルール5 子どもには死ぬ「前」に与える

  • 子供にはあなたが死ぬ前に財産を与え、子供に与えるべき金を取り分けた後の残りの自分のための金を生きているうちに上手く使い切るべき。
  • 偶然に任せると子供たちは相続した金を最大限に活用できるタイミングを逃しやすい。
  • 親が財産を分け与えるのは、子供が26〜35歳の時が最善、譲り受けた財産から価値や喜びを引き出す能力は年齢と共に低下する。

 ルール6 年齢に合わせて「金、時間、健康」を最適化する

  • 人生の残り時間によって、今を楽しむことと将来に備えることとのバランスを最適化する。
  • 健康上の問題は年齢が上がるにつれて大きな制約になり、高齢者では最大の制約となる。
  • 金から価値を引き出す能力は年齢と共に低下していく。
  • 金、時間、健康のバランスが人生の満足度を高める。
  • 時間不足で経験をする機会を逃しているなら、金で時間を買う方法を検討すべき。

 ルール7 やりたいことの「賞味期限」を意識する

  • 私たちが思っているほど先延ばしできない経験は多い。物事にはそれを行うための相応しい時期がある。
  • 死ぬ前に後悔すること2つ。勇気を出してもっと自分に忠実に生きればよかった。働き過ぎなければよかった。
  • 人は終わりを意識するとその時間を最大限に活用しようとする意識が高まる。

 ルール8 45〜60歳に資産を取り崩し始める

  • 死ぬまでに必要な金=1年間の生活費 x 人生の残り年数 x0.7
  • 老後資金を必要以上に増やそうと働き続けると、金は得られてもそれ以上に貴重な時間と健康を逃してしまう。
  • あなたが考えているより老後には金はかからない。

 ルール9 大胆にリスクをとる

  • 一般的にリスクを伴う行動は若い時ほどデメリットが少なくメリットは大きい。
  • 歳を取ると失うものは増え、成功して得られるものは少なくなる。
  • 大胆に行動する3つのポイント。人生の早い段階が良い。行動を取らないことのリスクも大きい。リスクの大きさと不安は区別すべき。
  • 人生で一番大切なのは思い出を作ること。

感想とまとめ

お金のコンサルティングをする場合、いかにお金がショートしないかをアドバイスすることが圧倒的に多いが、経験や思い出づくりも大事なので、お金の使い方もマネーリテラシーの1つであることを痛感させられる。

ルール8で取り崩しの開始が45〜60歳とあるが、人生100年時代と言われる今の日本の老後不安を考えると富裕層を除いては現実的でない。死ぬまでに必要な金の計算式の詳細は不明。アメリカは資産を株式で運用している割合が高いのに対し日本はそれが低いため、日本にそのまま当てはめるわけにはいかないだろう。

若いうちにリスクを取ったからこそ豊かな人生の可能性が広がると言える。リスクを取らない安全な生き方は退屈なものだが、日本の雇用はリスクを取りにくいシステムである。公務員などはリスクを取らない典型的な働き方である。

※この本にはファイナンシャルアドバイザーが度々登場します。著者はファイナンシャルアドバイザーの示唆もありこの考えに至ったようです。