「金融サービス仲介業」が創設されるようですが

昨年6月に「金融商品販売法」が「金融サービスの提供に関する法律」に改正されたことで、2021年末頃には新たな「金融サービス仲介業者」が誕生する。「金融サービス仲介業者」とは何者だろうか?

金融サービス仲介業者とは

金融サービス仲介業者とはその名の通り仲介するだけで自ら金融商品を販売しない。既存の金融機関に取り次いだときの仲介手数料を利益とし、その利益が透明化されるようだ。

既存の金融機関は金融サービス仲介業者と手を組むことで自社の販路を拡大することができる。

金融機関以外の一般事業者は金融サービス仲介業者に登録することで、自社の業務・サービスに関わる金融サービスを透明性を持って提供することが考えられる。(例:不動産業者による住宅ローンや地震保険の提供、ウエディングプランナーによるカップルの銀行口座の申し込みなど。ただし、一般事業者がどこまで金融サービス仲介業者として事業展開していくかは現段階では不明)

金融業界の最近の動き

SBI証券は地方銀行と積極的に資本提携しており、ITツールを使った地方銀行の顧客向けのサービスを拡充している。日本郵政の増田社長は、郵便局で「相続や介護などの相談を広げる」と述べ、高齢者向けの新事業を展開する考えを示した。

これらの動きは顧客に対する金融商品の選択肢を広げ、かつワンストップによるアドバイスが受けられる顧客の利便性を追求した事業展開と考えられる。

国策としてのアドバイザーの育成

「銀行はどこに行くのか」や「FPとFAの違い」でも今後の金融業界は顧客本位のコンサルティングに転換していく必要があるということを書いた。

今回の金融サービス仲介業者の創設は、(金融庁の2000万円問題のレポートにあるように)顧客の最善の利益を追求する立場に立って総合的なアドバイスを提供できるアドバイザーとなり得る主体を新しく一つ増やした形である。つまり、「貯蓄から投資(資産形成)へ」という国策が一つが具体化されたモノである。

もう1つ必要な国策が

最後に一言だけ触れたい。この「貯蓄から投資へ」という国策は当然ながら貯蓄のある世帯を対象とした施策である。一方で金融資産非保有率の世帯は、単身世帯で38%、2人以上世帯で24%にのぼる。(金融広報中央委員会:家計の金融行動に関する世論調査2019年)この貯蓄の無い世帯あるいはあっても少ない世帯に対する施策が見えてこない。

実質賃金(最低賃金)の引き上げ、公共料金の引き下げ、消費税の廃止などの貯蓄ができるような施策も併せて打ち出さないと益々格差社会を助長することになってしまうのである。

(バイデン大統領はコロナ禍で最低賃金を15$(5年で倍増)とする経済対策案を議会に出すそうですよ菅首相)