相続税対策は簡単!

相続税法はあるが贈与税法はないことをご存知だろうか。贈与税は相続税法の中に規定され、相続税の補完的役割となっているからだ。この税体系を見直すために、昨年12月に発表された「令和3年度税制改正大綱」に相続・贈与税の一体化が記載された。今後、相続税対策はどうすれば良いだろうか。

税制大綱の概要

相続税法では、相続と贈与で税負担が異なるため、相続の発生する前に生前贈与をして税負担を軽くする対策が横行しているが、相続税逃れのための生前贈与があまり有利に働かないような改正が検討されている。

贈与税には歴年課税と相続時精算課税がある。

歴年課税は年間110万円までなら非課税なので、10年で1100万円(×子どもの数)資産を移転できる。ただし相続前3年間の贈与分は相続時の評価に加算される。

相続時精算課税は贈与したときは2500万円まで非課税だが、相続時に贈与分も含めて精算する制度で、値上がりの期待できる資産の移転であれば贈与時の低い評価額の課税で済むというメリットがある。

この2つの課税どのような変更が検討されているだろうか。

おそらく歴年課税を廃止し、相続時精算課税制度のみにする。またはそこまでの大なたではなく、歴年課税は存続させるが3年という繰戻しを10年あるいは15年とすることだ。

(その他、教育資金や結婚・子育て資金の一括贈与の廃止も検討されているようだ)

相続税対策のパターン

相続税対策は実はあまり難しくない。ほぼパターンが決まっているからだ。実際の家族関係を鑑み、これらのパターン手法を組み合わせていけば良い。(家族間の調整をすることの方がはるかに難しい)

対策1:相続財産を減らす(生前贈与、教育資金や結婚・子育て資金、住宅取得資金の一括贈与)

対策2:法律に規定された控除・特例の活用(小規模宅地評価減・生命保険の500万円控除・配偶者の税額の軽減制度)

対策3:不動産の活用(不動産の購入・賃貸物件の購入・不動産の売却による納税資金の確保)

対策4:家族関係の見直し(養子縁組)

今後の相続税対策のあり方

今回は対策1の生前贈与にメスが入れられる。他の対策は従来通り変わらないと思われる。生前贈与が出来なくなると、子供はいつ発生するかわからない相続時に資産を引き継ぐこととなり、生前にもらえない分、生活設計がしにくくなる。

生前贈与が出来なくなった場合、今後は法人設立による相続税対策が使わるようになるだろう。法人設立により、贈与税を支払わずに相続人(後継者)への財産移転を行える。その手法は相続人を法人の役員とし、家賃収入などを役員報酬というかたちで相続人に分配するのである。

法人設立による節税策は従来のままである。この手法は法人設立の煩わしさを考えると、一定の資産を持っている人が対象となる。

ただ無理な相続税対策は税務調査が入る可能性があるので、常識の範囲内で相続税対策をすることをお勧めする。