今の円安は良いの悪いの?

円安が止まらない。3月に1ドル=115円程だったのが6月には135円台となった。わずか3ヶ月で円がドルに対し15%も価値が下がった。その影響でエネルギーや食料品など輸入製品が高騰を続けている。

日本の製造業に勢いがあった頃は、円安が進むと輸出企業が儲かる良いイメージがあったが、はたして今回の円安は日本にとってメリットがあるのだろうか。

円安のメリットとデメリット

円安のメリットとしては次の3つが考えられる。

  • 輸出企業の価格競争力が上がること(ただし貿易摩擦を回避するため生産拠点を海外に移してしまったため以前ほどメリットはない。自動車の海外生産比率66%(2020年))
  • 海外資産に投資したものの配当、利子、売買差益が円換算で増える(個人でドルを115円で買っておけば円に戻したときに135円となった。ただし外貨交換の手数料がかかる)
  • インバウンド需要が増える(コロナ禍では期待できない)

ではデメリットは

  • 海外から輸入するモノの値段が上がる

メリットは一部の企業や事業家に限られるのに対し、輸入企業や一般庶民はデメリットばかりが実感される。

円安の原因

円安の原因は様々なものがあるが、主に言われて理解しやすいのが日米の金利差である。

アメリカはコロナ後の景気回復が堅調でインフレ率が高まったことからアメリカ中央銀行(F R B)が金利を引き上げることで景気をさまそうとした。

一方で日銀は金融緩和を継続し、利上げについては明確に否定している。アメリカの政策金利は2.5%、日本は–0.1%、これにより日米金利差は2.6%となっている。(2022年7月現在)

金利差が広がれば、低い金利の円を借りてきてドルを買うと円とドルの金利差はリスクなく稼げるので、円を売ってドルを買う動きが加速する。

出口戦略のない日本銀行

円安が進まないように金利差を埋めるにはどうしたら良いか。

日本の政策金利を上げると住宅ローンを抱えている人の返済額が上がり、設備投資をした企業の資金繰りが滞る。

つまり景気回復が見通せないなか借金をしている人の増収が見込めないので直ちに金利を上げるわけにはいかない。

一方で景気浮揚策として金融緩和を続け、国債の利回りが上がらないようにすると金利差は縮まらないので、アメリカの金利が下がる(景気が鈍化する)のを待つのみである。

日本としては打つ手が無く、現状行っている金融緩和を継続するしかないのである。

(金融緩和→国債利回りの低下→政策金利が低くなる見通し→通貨安、という関係)

ではどうすれば良いか

円安の原因は金利差だけではない。他国が経済成長を続けるなか、日本はこの25年経済成長せず賃金も上昇していない。内需に対しては、外国依存体質をつくり産業の空洞化を招いてしまった。日本の経済は世界から見て相対的に弱くなっている。

円はドル、ユーロに続き第三番目の流通量であるが、外国為替市場における通過シェアを減らし弱い通貨(円安)になりつつある。

将来的に強い円(円高)を取り戻すためには、再び強い経済つまり国内に生産拠点を回帰し自給率を高めるような産業を育てていく必要があるだろう。

個人の防衛策としては、資産を円だけで持つのではなく、ドルや他の海外通貨に分散しておくことが必要である。

(円安と円高を混乱してしまう方もいると思うが、円を売ってドルを買った場合、買ったものが上がれば(つまりドル高になれば)儲かると考えてください)