免税事業者の皆様、インボイスの準備してますか

2023年10月から施行されるインボイス制度、全国513万(個人435万者、法人77万者 2015年時点)の免税事業者は、免税事業者のままでいるかインボイスを発行できる課税事業者になるのか選択をせまられるのだが、実はまだ制度の中身を知らない事業者が多い。名前は知っているがどれくらい影響が出るかわからないという方のために、わかりやすく解説したい。

制度の概要

インボイスとは「適格請求書」と訳される。

原則、課税事業者は売り上げで預かった消費税額から、仕入れで支払った消費税額を差し引いて消費税を納める。この仕入れで支払った消費税額の証明に、今後は課税事業者が発行する適格請求書が必要となる。免税事業者(課税売上高が年間1000万円以下)のままだとインボイスを発行できないため、顧客が仕入れ分の消費税を差し引くことができなくなる。

制度導入の背景

制度導入の背景にあるのは「軽減税率への対応」と「益税の抑制」である。

2019年10月に導入された軽減税率により、異なる税率が混在することとなったため、商品の仕入れや販売時の税額計算は複雑になった。そこでインボイス制度を導入して正確な税額を確認する必要が出てきた。

また、消費者が事業者に支払った消費税の一部が納税されず、そのまま合法的に事業者の利益になってしまう仕組みを「益税」という。免税事業者のこの「もらい得」の是正も、インボイス制度の導入理由である。

制度導入の影響

制度導入で問題となるのが、物やサービスを売買する場合、売る側免税事業者、買う側課税事業者の取引である。以下2つのケースに分ける。

私が免税事業者で顧客が課税事業者の場合、顧客にインボイスを発行できなくなるので、顧客はインボイスを発行できる業者へ取引先を変える可能性がある。私は顧客を逃さないためにはインボイスを発行できる課税事業者となるか、顧客は私に消費税分を値引いて売ることを求めてくるかもしれない。

顧客の私が課税事業者で仕入れ先が免税事業者の場合、仕入れ先がインボイスを発行できないので消費税分を差し引けなくなるため、仕入れ先を課税事業者に変更しようと考えるか、仕入れ先に消費税分の値引きを要求するであろう。

顧客が免税事業者や個人であるような商売、例えば街の床屋さんなどは免税事業者のままで特に問題はない。

筆者の雑感

インボイスは納税事務負担を増やすうえ、免税事業者の経営を圧迫するものである。また、起業のハードルも上げてしまうため、導入には賛成しかねる。

今のところ免税事業者の危機感はあまり感じられない。むしろ世論は益税が解消されるため、導入して当然という雰囲気すらある。

消費税軽減税率導入の際には、テレビで繰り返し「店内で食べた場合と持ち帰った場合の違い」を放送していた。インボイスはそれ以上に消費税制に影響があるのだから、免税事業者に制度内容をしっかり理解してもらうためにもテレビ番組で解説してもらいたい。