金融機関の認知症対策(金融ジェントロジー(老年学))

最初のブログで認知症を取り上げたが、最近金融機関が新たな資格制度も含め認知症の具体的対策案をまとめたので紹介する。

認知機能の低下で金融機関が困っていること

金融機関の窓口では、顧客の高齢化に伴い「暗証番号を忘れて預金を引き出せない」「お金を盗まれたと思い込んで窓口で急に大きな声を出す」などの高齢者によるトラブルが増加している。また、認知症と診断された顧客の凍結される金融資産が2030年には200兆円を超えるとの試算もある。

金融機関の認知症対策

2021年2月、全国銀行協会(全銀協)が、認知機能の低下した高齢者の預金について、家族が代わりにお金を引き出すことを求めた際の対応指針をまとめた。

預金を払い戻すには本人の意思確認が必要で、これまでは家族といえども引き出しを認めていなかった。その商慣行を見直し、一定のルールを設けた上で家族らによる代理を認める。今回まとめた指針では、成年後見制度の利用を求めることが基本としつつも、使い道が医療費など「本人の利益に適合することが明らか」な場合に限って認める判断基準を示した。

2021年1月、医学や法律など認知症の専門家らでつくる日本意思決定支援推進機構と金融財政事情研究会は、認知症の症状に関する知識や、公的支援窓口との連携、成年後見制度や消費者契約法といった実務で必要な仕組みなどについての理解を求める新たな資格である「銀行ジェロントロジスト」の認定試験を始めた。

認知機能低下の段階

通常は誰もが年齢とともに認知機能が衰える。認知機能低下の程度に応じて、①通常者、②軽度認知症(M T I)、③認知症の段階に分けられる。

②の軽度認知症の段階では資産凍結はされないが、本人の意思決定には既に相当の障害があると考えられ、この段階の者が一番特殊詐欺(オレオレ詐欺等)に遭いやすいとされている。令和2年は1万3000件、約300億円の被害があり、漸減傾向にあるものの、今後この層が増えることを考えると被害額は再び増加に転ずると思われる。

①の通常者も決して安心はできない。認知機能が衰えていくことを自覚していない者がおり、特に高学歴の頑固者は自信家が多く、自分の認知知機能が衰えることに対するリスクを軽視しがちである。また加齢に伴い当然②、③の層に落ちていくことは十分に考えられる。

認知機能低下の判断基準

認知機能低下の判断は軽度の段階で行うことが大切である。医学的な認知症の判断基準はあるが、軽度認知症の基準はおそらく統一的にきちんと整備されていない。そのため本人の世話をしている福祉介護に携わる人による客観的な判断基準が求められている。

誰もが認知機能の低下を認める

認知機能低下の検査を家族が本人に受検するように勧めると、場合によっては家族間の人間関係を悪くする恐れがある。

認知機能は誰もが落ちるということの理解が進み、自ら率先して検査を受けるような雰囲気が醸成されれば、誰もが健常者のうちに事前対策(家族信託などの制度)をしやすくなるのだと思う。

まとめ

認知機能は誰もが低下していく。高齢者が所有する金融資産が増える中、認知機能の変化を金融機関が察知し、家族や福祉機関と連携して支援していくことが必要である。