毎度の年金の質問にお答えします

今回は繰り返し言われる「国民年金だけではやっていけない」と「将来年金がもらえるかわからないので若いうちに保険料を払ってもしょうがない」という自営業者(第1号被保険者)の2つの年金の質問について私なりの考えを示します。

国民年金の保険料と年金額

国民年金保険料の月額は17,000円(平成16年度価格をベースに毎年度名目賃金の変動に応じて毎年見直される)、つまり年間約20万円、これを20歳から60歳まで40年間(480ヶ月間)支払う義務があります。(令和2年度の保険料は16,540円/月)

それに対し、支払われる年金額は年間780,100円(令和2年度の支給額は781,700円)

(780,100円は平成27年度本来水準、この年から物価変動より下回って減額されるマクロ経済スライド制が導入)

780,100円/年 x 12ヶ月/480ヶ月 ≒ 19,500円/年

年20万円の保険料を払うと年19,500円の年金がもらえます。つまり、約10年で保険料が回収できることになります。(もちろんインフレリスクはありますが、75歳以上長生きした分は全て収益になるということです)

この払込の時期ともらえる時期がなるべく近いと早く回収できるので、60歳までに480ヶ月分支払っていない人の60歳から64歳までの間保険料を支払える任意加入制度は、大変お得な制度と言えます。

国民年金と厚生年金の違い

たしかに月65,000円で生活するのは無理だと思います。サラリーマンや公務員(第2号被保険者)には国民年金(老齢基礎年金)に加え厚生年金(老齢厚生年金)いわゆる2階部分があります。第2号被保険者の場合、国民年金分と厚生年金分の保険料の半額を会社が払ってくれます。また扶養されている専業主婦(夫)(第3号被保険者)は国民年金保険料を払う必要がありません。自営業者の配偶者は第1号被保険者となりますので保険料を払う必要があります。

(第3号被保険者は昭和61年4月に基礎年金制度が導入される際に制度化されましたが、不公平感が指摘されており、見直しの検討に上がっております)

年金額の不足分を補う方法

自営業者が年金額の不足分を補う方法としてはどのような制度があるでしょうか。第2号被保険者の場合保険料は給与から強制徴収されますが、以下の制度は自営業者自ら加入する必要があります。

付加年金

まずは簡単なところから付加年金です。国民年金保険料に加えて払える保険料で月400円です。年金額は毎月200円増えます。2年で回収できる大変お得な制度ですが、金額が小さいので不足分を補うほどの制度ではありません。

国民年金基金

国民年金基金が自営業者の2階部分と言っていいでしょう。iDeCoと併用でき年間816,000円(月68,000円)まで拠出できます。iDeCoは確定年金ですが、国民年金基金は終身年金です。予定利率は2014年度から1.5%となっております。拠出額に対し年金額がいくらになるというシミュレーションは、加入時期や性別等によって異なるため詳細は省きますが、毎年の支払額(口数)を変更して将来の年金額を調整することができます。国民年金では足りないという自営業者の方は若いうちから検討することをお勧めします。

それでも保険料を払った方が良い理由

若い人の間では将来年金が支給されるかわからないので、民間の保険会社の個人年金保険で備えるという考え方があります。国民年金の賦課方式(現役世代の保険料が高齢者の年金に回る)に対し、自ら用意する積立方式です。しかしこの考え方にも民間会社が倒産する等のリスクがあり、実際に外資系保険会社に移行されたことにより、当初予定されていた配当金が全くなくなった保険が相当数あります。

保険料を払った方が良い理由は(支払いは義務です)自ら障害者となった場合の障害年金の受給、配偶者に先立たれ子供を養育しなければならなくなった場合の遺族年金の受給ができるからです。

障害(基礎)年金

支給要件と支給額

国民年金に加入している間に、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師の診療を受けた日(初診日)があること

一定の障害状況にあること、保険料の納付要件を満たしていること などがあります

【1級】 781,700円 x 1.25  + 子の加算

【2級】 781,700円 x  子の加算     

 子の加算  第1子・第2子 各224,900円  第3子以降 各75,000円

障害者になることで、働いて給与収入を得ることが大変難しくなります。障害者雇用を国が推進していますが、障害者の賃金は低く抑えられているケースが多いです。多少の給与収入があっても障害年金が生活の基本的な収入と言えるでしょう。

遺族(基礎)年金

支給要件と支給額

老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき。(10年ではなく25年であることに注意)

保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上あること。

(1)子のある配偶者 (2)子  

 子とは18歳になる年度末までの子のことを言います

 781,700円 x  子の加算   

 子の加算  第1子・第2子 各224,900円  第3子以降 各75,000円

これらの人生におけるリスクを考えると、国民年金はある意味国が制度化してくれた収入保証保険のようなものです。障害年金や遺族年金は高度障害状態になったときや死亡したときに収入を保証してくれるものです。ただしこれらの年金だけでは不足することもありますので、別途民間の保険でカバーする必要もあります。

遠い将来の年金のことよりも掛け捨ての保険と考えれば保険料を払っておこうという気にもなるのではないでしょうか。

まとめ

・国民年金(月額約65,000円)は少ないが、国民年金基金やiDeCoで増やすことが可能

・国民年金は長生きするほどお得な投資商品と言える

・国民年金は障害者になったり、子供を一人で育てることになったときに備える保険商品と言える

補足

厚生労働省が障害年金の業務統計を初めて公表(2020.09.10)https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&cad=rja&uact=8&ved=2ahUKEwiNhtyT5KTsAhU2y4sBHSvzDXgQFjAAegQIAhAC&url=https%3A%2F%2Fwww.mhlw.go.jp%2Fcontent%2F12508000%2F000669908.pdf&usg=AOvVaw13CUTpWNmp-r2Oy7aepJ9f

概要 年間11万人が新規に申請 基礎年金認定率は85% 厚生年金認定率は91%

   再認定申請は27万人 99%が再認定

   障害別割合 精神・知的障害 61% 外部障害 24% 内部障害 15%